N.Ravikiran「Latangi」
N.Ravikiran
「Latangi」
¥2,500
I002
南インドの楽器では唯一、共鳴弦を持つチトラヴィーナー。
まずはその共鳴弦のミスティックな響きでアルバムは幕を開ける。
ラーガム・ターナム・パッラヴィ形式で、ミスティックではありつつも温かみのあるアンビエントな雰囲気のラーガ「ラタンギ」の世界が、一時間余りにわたり展開される好アルバム。音質もインドのものとしては上質で、スライドバーのスライドノイズや、演奏者のうなり声までもリアルに聴こえる。
バイオリン奏者は、マイソールを中心にチェンナイでも活躍するマイソール・ナガラージ。
伴奏だけでなく実の弟マンジュナートとのバイオリン・デュオでも活躍し、2007年春にはシドニーのオペラハウスでの公演も行っている。ツボを押さた節度のある演奏が好印象。
ムリダンガム奏者は、サティシュクマール。カンジーラ奏者は、2002年に亡くなったヴェテラン、V.ナガラージャン。往年の名バイオリニストPapa
Venkataramiahの息子で、M.S.スッブラクシュミともよく共演。もとはムリダンガム奏者であったが、カンジーラも演奏し(南インドではムリダンガム、カンジーラ両方やるという人は多い)、日本ビクターの「ターラの魔術師」でも、そのカンジーラプレイを聴くことができる。
トラック1は、アーラーパナとターナム。ターナムではラーガを「ラタンギ」の後、「Chalanata」、「Gowri」、「Shudda Saveri」、「Vijayashri」、「Manirangu」と次々に変えている(Ragamalikaと呼ばれる)。
パッラヴィ(トラック2)のターラは、カンダ・ジャーティ、トリプータ・ターラ(5+2+2)で、8カライ(一拍の中のサブビートが8)。チトラヴィーナーとムリダンガム、バイオリンとカンジーラの二つの組み合わせで交互にパッラヴィが展開。最初は非常にゆっくりとしたテンポで、うねるような長い周期でメロディーをやり取りする。チトラヴィーナーが徐々にテンポを上げ、周期を短くし演奏の熱を増していく。やがて、その両者が合流し一つになりクライマックスへと上りつめる。まるで鮭が川をさかのぼる時のように、流れのゆるやかな河口から水源に近い急流まで、徐々に変わり行く音風景を楽しんでほしい。
タニ・アヴァールタナムはトラック2の23分から4分ほど。クラップの音が聴こえないので、ターラはカウントしにくいのだが、コンパクトながらもかっこいい。その後は再びパッラヴィに戻り、一盛り上がりし共鳴弦を再び鳴らし、最遅のテンポでのパッラヴィのモチーフに戻り、ムリダンガム・カンジーラのフレーズで締めるというシブイ終わり方。
<演奏者>
Chitravina:N.Ravikiran
Violin:Mysore M.Nagaraji
Mridangam:Vizianaagaram Satishkumar
Kanjira:V.Nagarajan
<曲目> 形式-Raga-Tala
- Ragam thanam-Latangi-Khandatriputa(8 Kalai)
- Pallavi-Latangi